今年に入って「これは!」という驚きがあるMVにはまだ出会っていない気がする。
そこでいいMVってなんなのか考えてみたよ。
最初に、MVを構成する要素としては
・ダンス
・ドラマ
・イメージ
があって、この3つを組み合わせることが多い。
グループの特徴や曲に合った組み合わせと配合比率の設定がまず重要になる。
では、私が考える良いMVの条件とは
・個々のメンバーが認識でき、かつ魅力的であること
それぞれのメンバーのキャラクターや長所を拾い上げることで、メンバーの差別化を行う。メンバーが多いほど難しくなる。
・曲・歌詞と映像がリンクすること
ダンスメインのMVの場合はまず振り付け自体が曲・歌詞とうまくリンクする必要があり振付師の力量に重要になってくる
ロケーション、セット、小道具、編集、特殊効果などを利用して秒単位でコントロールする。
ぱっと見それとわからないようなリンクを多用することで、3分程度のMVのなかに情報を詰め込むとリッチなMVになる。見終わったときに「なんだか分からないけどよかったなぁ」となって何度も見たくなることにもつながる。
・表情、演技がいいこと
ドラマ風MVでの演技力はもちろん、イメージカットやソロダンスの場合の表情などもとても大事。
・やりすぎないこと
要素の配合比率にもいえることだけど、やはり曲に合った程度というものが合って、例えばぶりっこタイプのスローテンポの曲はあまり内容を詰め込む必要は無く、メンバーの可愛さを見せるだけで十分という場合もある。
某事務所のように予算があるからってやりすぎると結局完成度が落ちることも。
では、去年の最高傑作MVを見てみよう。
Nine Muses/Wild
http://youtu.be/fwN_Axs7pL4
まず前提条件として、9人という大人数、ダンススキルはそこそこ、全員ルックスがいい、ということがあるんだよね。これを踏まえてどういうMVになっているかというと・・・
タイプは、ダンス+イメージ
<ダンススキルの弱点をカバー>
振り付け自体が、それほどダンススキルを要求しない代わりにフォーメーションで見せる非常に完成度が高いもの。全員高身長でスタイルがいいため、ちょっと気取ってたっているだけでも様になるのは彼女たちならではの長所だね。
なのでMVのダンス部分はフォーメーションを中心に9人全体を見せるシーンが多い。
中盤で、ビートにあわせて虹色のエフェクトをかける部分は、ダンスシーンで一秒たりとも退屈さを感じさせないようにする配慮だね。
フォーメーションを見せるため基本的に正面からのみの撮影なんだけどクレーンカメラで角度を変えているのも同様の理由だろう。
イメージカットが多い中でもポイントとなる振り付けはしっかり見せてくれるバランスも見事。
<計算されたモノクロ+αイメージ>
で、このダンス部分を含めてイメージ部分も、ほぼモノクロ+赤で色を統一していて、これが強烈なオリジナル感を放つ。
メンバーそれぞれが持つ小道具・衣装にポイントとして赤が効果的に使われている。メンバーの素材が良いので派手にする必要が無いんだね。
映像としては数秒単位の細かいカット割が行われるんだけど、モノクロにしているためそれほど煩雑な印象を受けない。
さらにイメージカットでかなり大胆な下着風の衣装を着ているんだけど、これもモノクロ効果で下品さを抑えている。
ダンスシーンのメインの黒いスーツもスタイルやアクセサリーで各自個性を持たせて、途中で白のショートパンツとジャケットでヴァリエーションを与えているのも見事。
<美しさ・セクシーさにフォーカス>
曲自体はいいんだけど、じつは歌詞はとりとめなくてもともとあまり印象に残らない。だから歌詞と振り付けのリンクという部分で特筆すべきことはないし、映像との関連性もほとんど無い。(ポイントポイントで、歌詞の単語と映像とのリンクはされている)
これはこの楽曲自体の限界であって、MVとして彼女たちの美しさ・セクシーさにフォーカスすることでその限界をはるか上空で飛び越えている。
9人それぞれ衣装、小物をで差別化をしっかり行い、個別のイメージカットで全員をちゃんと綺麗に見せているのがすばらしい。最後の私服っぽい衣装は個人的にはいらなかったような気がするけど、ポップさも見せたいというところだろうね。
個々の表現力の差はあるけど表情もよく捕らえている。
出来ることと出来ないことを踏まえて、一番効果的な部分にフォーカスしたうえでメンバー・スタッフが全力を尽くした結果がこのMVじゃないかな。
ありきたりなMVを作ってる監督は、まずこのMVを100回見るべし!