韓国映画『鋼鉄デオ:救国の鉄カバン』(2012/103分)
監督: ユク・サンヒョ
出演: キム・イングォン、ユ・ダイン、チョ・ジョンソク、パク・チョルミン
『パンガ?パンガ!』のユク・サンヒョ監督と主演キム・イングォンが再びタッグを組んだコメディ。
日本でもDVDが出そうな気がするのでネタばれなしで。
<あらすじ>
中華料理屋「中華楼」の出前担当No.2 カン・デオ(キム・イングォン)。恋愛経験の無い彼が、よく出前を届ける女子大学生イェリン(ユ・ダイン)に一目ぼれする。彼女の誕生日の情報を聞きつけ、花束とプレゼントを持って待っていると、なぜか周りには大学生が集まり、あれよあれよという間に在韓アメリカ文化院に突入し占拠。知らずに学生運動の活動家たちと一緒に立てこもることになりあわてふためくデオだが、その場にはイェリンもいて・・・・
<感想>
80年代の軍事政権下で学生運動が激しかった時代を扱ったコメディ。
笑いの中に社会的な問題をうまくとりこむのはユク・サンヒョ監督ならでは。
まずタイトルの「鋼鉄デオ:救国の鉄カバン」なんだけど、当時の学生運動の言葉で「救国の鋼鉄隊伍(カンチョルデオ)」というのがあり、主人公の名前カン・デオをかけている。
鋼鉄の鉄(チョル)の部分は、中華の出前持ちのことを持っているオカモチから「鉄かばん(チョルカバン)」と呼ぶのでその意味もかかっているんだね。
で、この映画の素材の中で学生運動より重要なのが、この「鉄カバン」に象徴される中華料理店で働く人々。もともと中国系韓国人が始め、チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺)に代表される安く腹を満たすことが出来る料理として国民に愛されているんだよね。
何時でもどこへでも電話一つで出前を届ける「鉄カバン」は、給料が安くきつい仕事として描かれることが多く、性格もバイクの運転も荒いイメージはいろいろな映画で登場する。
韓国社会には中国系への差別的な意識も少なからずあり、このへんは『パンガ?パンガ!』の監督らしい着目点。
本作では、実際にきつい仕事でも懸命にこなす「鉄カバン」たちと、えてして頭でっかちな学生運動家たちとの対比の中で、カン・テオというとても愉快で愛すべきキャラクターが描かれている。
不細工なブルース・リー、テオが初恋の人に近づきたいだけなのに、学生運動の有名人と勘違いされていく様子が可笑しく、一途な思いとラストではさわやかな感動が。
ヒロインのユ・ダイン(『容疑者』)は自然な魅力がある女優だね。ペ・ドゥナに似てる。
『建築学概論』『観相』のチョ・ジョンソク、『音痴クリニック』のパク・チョルミンら助演もいい。
ちなみに題材となった篭城事件は実際にあった。
テンポがよく気軽に楽しめる作品。日本公開は無理でもDVD化を是非希望!
★★★☆☆